【世界の[下半身]経済がわかる本】を読んでみた

 

 

 

 はじめに

 色々とストレスが溜まって「セックス」とか「下半身」で検索をかけてたときに見つけた1冊です。

本書の概要

著者について

 著者の門倉貴史*1先進国経済、新興国経済、地下経済労働経済学、行動経済学などを専門にしています。また、非合法な取引も含まれる「地下経済」と呼ばれるジャンルにも取り組まれており、関連著作も多数出版されています。

書籍の目的

 いきなりですが、男性がソープランドで遊ぶと百貨店の売上が伸びるという効果があります。その流れはまず、①男性がソープランドでお金を使う②働いている女の子の懐が潤う③その女の子が贅沢品を購入するために百貨店を利用する、という流れです。

 

 上記のソープランドの例のように、「お金」がどうやって発生し、どこに流れていくのかを「整理」しているのがこの本になります。

 下記が目的の引用です。

本書では、世界各国の繁華街で毎晩ひっそりと展開されている「下半身ビジネス」の最新事情を紹介するとともに、「下半身ビジネス」でお金がどのように発生して、そのお金がどこに流れていくのかを整理していく。合わせて、さまざまな「下半身ビジネス」の儲けのカラクリも明らかにしていきたい。

本書の内容

構成の紹介

 書籍の構成は下記の枠線で囲まれている通りです。 1~5について、勝手に色々と書いていこうと思います。

はじめに

1 開発途上国とセックスツーリズム

2 先進国は性風俗産業にどのように対峙しているのか?

3 下半身ビジネスのクールジャパン戦略

4 日本のセックスの最前線

5 下半身経済と「ウーマノミクス」

おわりに

1 開発途上国とセックスツーリズム

 第1章では、開発途上国性風俗産業と「セックスツーリズム」の関係について述べています。これは、程度の差はあるがどの開発途上国も先進国の男性の下半身によって急速に成長したという側面があるためです。

 例えば、本書で最初に取り上げられているタイ。タイの性風俗産業が1年間で稼ぐお金は約64億ドル。これはタイの観光収入の13.3%です。また、フィリピンの性風俗産業の市場規模は年間60億ドルであり、NHKの2017年度事業予算に匹敵するほどの金額です。この他、大人のおもちゃやブルセラショップなどの分野でも巨額のお金が動くのが性風俗産業です。また、性風俗店が盛んな地域は治安が悪いことがの方が多いので注意が必要です。

 このように、性風俗産業は外貨を稼ぐ手段として活用されています。

2 先進国は性風俗産業にどのように対峙しているのか?

 第2章では、国家の性風俗産業に対する対応について触れています。まず、性風俗産業に対する規制は「北欧モデル*2」と「オランダモデル*3」の2つです。世界的には「北欧モデル」が支持されています。

 フランスは移民・難民流入問題もあり、「北欧モデル」を採用しています。これは、性風俗産業が移民・難民の受け皿になっていることから、買春者を罰することで*4業界全体を縮小させることで流入を減少させようという狙いからです。

 一方、オランダでは2000年10月に斡旋を含む売春が完全に合法化されています。セックスワーカー労働組合に入ることも可能になり、各種税金も納めることになります。斡旋も許可証が必要になったことで、斡旋業者が未成年を雇ったり、人身売買で連れてこられた外国人を強制的に働かせるということも抑制できます。また、売春ビジネスは年間8億ドルを稼ぐビジネスとなっています。

 他にも、2002年に売春法が施工されたドイツでは「セックス税」が課されている都市がある*5。このセックス税はケルン市のパートタイムのセックスワーカーからクレーム*6から始まった。一方でベルリン市はセックス税を前払い式で徴収するシステムを導入し、ボン市はチケット販売機*7を設置することでセックス税を徴収しています。

3 下半身ビジネスのクールジャパン戦略

 第3章では下半身ビジネスのクールジャパン戦略について触れています。主に、アダルトビデオ(AV)業界、コンドーム、ローション、ラブドール、アダルトショップ、バイアグラLGBT層、ニューハーフ、ボーイズラブについて触れられています。

 まず、AV業界は市場全体として縮小傾向にあります。AV女優のギャラは下落傾向にあり、トップAV男優はイリオモテヤマネコよりも数が少ないととのことです。そんなAV業界ですが、一部は盛り上がっているジャンルがあります。それがNTR(寝取られ)です。また、AV全体に占めるシニア向け、女性向け商品の割合は伸びつつあります。

  また、ラブドールバイアグラもシニア層の影響を受けています。独り身のシニアが寂しさを紛らわせるために、あるいは現役でない奥さんの許可を得て下半身現役のシニアが購入するようです。バイアグラも同様にシニアに求めれています。これは男性に限らず、性欲がある高齢女性が夫に服用を望んでいるケースも31%もいます*8

4 日本のセックスの最前線

 第4章は日本のセックス産業について触れている。触れているのはソープランドファッションヘルス、イメージクラブ、デリバリーヘルス、ピンクサロン、オナクラ、ストリップ劇場、ラブホテル、SMバー(SMクラブ)、回春マッサージ、M性感、ちょんの間、JKビジネスについてです。

 各ジャンルの略歴とシステム、市場規模についての説明がされています。例えばソープランドです。以前はトルコ風呂という名称で営業されていましたが、トルコ人留学生からのクレームを受け、1985年から現在の名称となりました。

 そして、ソープランドは提供するサービスの中に「売春防止法」に明らかに抵触するものを含む非合法な産業です。これをクリアする建前は、ソープランドはあくまでも高級感溢れるお風呂屋さんで、利用するお客さんは入浴料を払ってゴージャスな入浴をしているだけという建前です。中でいかがわしいおことをしていても、勝手にキレイな女性と自由恋愛をしているのであって、店として干渉することはできないという理屈です。そして、ソープランドの帳簿には入浴料のみが記帳され、サービス料金はそのまま嬢のものになるというわけです*9

5 下半身経済と「ウーマノミクス*10

 第5章では女性向けの「夜のビジネス」について紹介しています。官能小説の輪読会(あるいは朗読会)、レンタル彼氏、出張ホスト、女性向け性感マッサージ、アダルト系パーツモデル、アダルトボイス販売、キャバクラ(朝キャバ、昼キャバ、熟女キャバ

)について紹介しています。

 日頃のストレスの発散としてのレンタル彼氏、性欲の発散としての性感マッサージ、副業としてパーツモデルやボイス販売、キャバクラなどを紹介しており、奥さんのそういったサービスを了承する理由が「浮気や不倫は困る」という点は、利用する理由も、了承する理由も男性でも女性も特に変わらないんだなと思いました。

 

終わり

 性風俗産業に関係するお金の動きが整理されおり、非常にわかりやすいと思いました。また各ジャンルごとでまとめられているため、読みやすかったです。個人的には、売春は合法化して管理した方がセックスワーカーの保護につながるんじゃないかなと思いました。 

 次はこの本の参考文献から選んで読むか、門倉先生の著作から選んで読むか、全く関係ないのを読むか・・・


 

*1:ホンマでっかTV」の門倉先生です

*2:セックスワーカーの保護目的として、買春を禁止する。

*3:性風俗産業の根絶は不可能なため、合法化することで積極的に管理していく

*4:買春者には罰金とセックスワーカーが置かれた状況についての講習が義務付けられ、売春者には社会復帰のための職業訓練、暫定的な定住資格が与えられます。

*5:ドイツではセックスワーカーは届け出制の職業となった

*6:フルタイムのセックスワーカーより稼いでいないのに、なぜ同じ税金がとられるのか、というクレーム。

*7:セックスメーター

*8:秋田県西明寺診療所が70歳以上を対象にしたヒアリング調査((男性153人、女性173人

*9:実際はすべて嬢のものというわけにはいかない。

*10:「ウーマン」と「エコノミクス」を組み合わせた造語。女性の消費力や労働力を積極的に活用することで日本経済を活性化しようとする戦略。